• 心不全は、心臓の機能がうまく働かず、心臓から血液を送れなくなってしまう状態のことを言います。
    今回は、心不全になった方ご本人とご家族の注意点について詳しくお伝えします。

心不全の特徴

心不全自体は一時的に良くなったり、悪化したりすることを繰り返し、徐々に病状が進行する病気です症状が一旦良くなっているように見えても、心不全は完全に治るわけではありません。

原因となる病気の種類によりますが、心筋梗塞や不整脈、他にもさまざまな理由で心不全になることがあります。心不全の原因となる疾患の治療が非常に大事になりますが、お薬の治療やさまざまな治療によって、一見良くなっているように見えても、油断するとまた悪化してしまうこともあります。そして、心不全は何度か増悪(悪化)といって悪くなったり、また回復したりを繰り返すことによって、徐々に全身状態が悪化していくことが多いです。

「急性増悪」と言って悪化することを防げると、緩やかに病気は進行していきますので、それを目指す治療が大事になります。

悪化して心不全での入院を防ぐために

適切な薬の治療に加えて、運動や食事などの生活習慣の改善が重要です。
心不全を悪化させないためのコツを知り、生活習慣にも気をつけながら心不全とうまく付き合っていきましょう。
これは心不全になった本人だけでなく、ご家族が気づけることもたくさんあります。

服薬について

症状が良くなっても、心不全は完全に治ったわけではないため、お薬を勝手にやめてしまうと症状が悪化してしまうことがあります。
医師の指示に従って、ご家族にも協力してもらいながら、お薬を飲み忘れないようにしましょう。
飲み忘れを防ぐためには、1回に飲む数種類の薬を1つにまとめてもらったり、お薬カレンダーに入れておくことによって忘れるのを予防することができます。
気になるようでしたら、薬剤師さんにも相談してみましょう。

禁煙について

タバコを吸われる方は、タバコに含まれるニコチンによって血圧が上がったり、不整脈を起こすことがあります。
心不全を悪化させないために禁煙は非常に大事です。
ご家族や周りの人が吸っていても影響を受けますので、周囲の人にも伝えてみましょう。

お酒を控えること

お酒を飲みすぎると水分のバランスが崩れてしまい、血圧も上がり、心臓に負担がかかります。
お酒は適量(おおよそアルコール量で20g以下)を目安に、楽しむ程度に控えましょう。
アルコール20gの目安としては、病状によってお酒をやめた方がいい方もいるので、主治医に確認しましょう。

感染症の予防

風邪やインフルエンザ、コロナなど、こういった感染症にかかると心臓に負担がかかり、心不全を悪化させる原因になります。
手洗いやうがいを心がけ、いつもと体調が異なると感じたら、早めに医療機関を受診する、もしくは早めに風邪薬を飲むなど対策をしていきましょう。
感染症の予防のために、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種も有効です。

ストレス緩和と睡眠

心不全は病気そのものの心配のほかに、生活の変化や金銭的な負担などにより、ストレスを抱えやすい病気です。
「息苦しい」という症状もその原因の1つです。
心配なことや気になることを1人で抱え込まず、話しやすい人に相談しましょう。
また、規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠や休息を取るようにしましょう。

便秘の予防

便秘によるいきみは腹圧の上昇させ、血圧を上げるため心臓に負担をかけてしまいます。
腹圧をかけないように、ゆっくり息を吐き、呼吸が乱れないように気をつけましょう。

◯便が出にくい方…排便前にウォシュレットで肛門マッサージを行うのも有効です。

◯食事の工夫…食物繊維の多い野菜を取るなど、工夫をしていきましょう。

◯改善しない場合…便を柔らかくする薬を飲んだ方がいい場合もあります。相談してみてください。

心臓に優しい入浴

心臓に優しい入浴方法を取り入れることで、血液の流れを良くし、心不全の症状を緩和することができます。
熱いお風呂に長時間浸かることは、心臓に負担をかけますので注意が必要です。

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日常の動作

掃除など、前かがみになる動作は長時間行うと心臓に負担がかかりやすいので注意しましょう。
布団の上げ下ろしや、重たい物の運搬はできるだけ避けましょう。

体重と血圧の測定

生活習慣に気をつけながら、心不全の悪化を防ぎ、悪化の兆しを見逃さないように、体重と血圧を毎日測定しましょう。
朝起きた時に息切れやむくみがないか日々確認しましょう。
ひどくなると、横になった時に息苦しさが強くなることもあります。

病院を受診する目安

以下のような症状があれば、早めに受診しましょう。

  • 今まで大丈夫だった距離を同じように歩いても息が切れてしまう
  • 1週間で体重が2kg以上増えている
  • 手足や顔がむくんでいる、またはむくみが強くなっている など

さらに、もっと悪い状態、すぐに受診した方が症状は以下のとおりです。

  • 何もしていないのに息苦しい
  • 横になると息苦しく、座っている方が息が楽になる
  • 血圧が低くてフラフラする など

上記のような症状に関しては、患者さんご自身よりも、一緒に過ごしているご家族など周りの方が気づかれることもよくあります。
以前は問題なくできていたことが苦しそうに見える、呼吸の音がいつもと違う、普段よりあまり動かなくなってしまったなどの変化に気づいたら、早めに医師に相談しましょう。

心不全は進行性の病気ですが、しっかり対策を取ることで、進行を遅らせることができます。
急性増悪して苦しくなって入院するのは、なるべく避けたいところですし、長期的にも予後が悪くなる、寿命が短くなるとも言われています。
そうならないために、主治医と相談しながら薬をしっかり定期的に飲むことが重要です。

利尿剤について

心臓の負担を取るため、むくみを取るために利尿剤がよく処方されます。
これを飲むとおしっこが近くなるので、それが嫌で薬をやめてしまう人がたくさんいます。

こういった状況に関しては、主治医が以下の内容をみて調節して処方しています。症状の訴えは受診の際に行うと良いとですが、自己判断でやめるのは控えましょう。

  • 受診の際のむくみの様子
  • レントゲンの結果
  • 採血のproBNP・BNPの結果(心不全の状態を見る数値)

他にできる対策としては、塩分を減らすことです。塩分が多くなると体の中に水分が増えてしまい、体重増加につながり心不全の悪化につながることがあります。ただし、水分はなるべくたくさん取りましょう。

そして、運動も毎日続けることが、悪化を予防するのに非常に大事です。

こういったことに気をつけながら心不全に付き合っていきましょう。