• 心電図検査で異常があったけれど、医師からは「心配いらない」と言われた…このような方は少なくありません。
    不整脈の中には、健康な人でも起こる「期外収縮」というものがあります。実際、心電図で不整脈を指摘される方の約9割がこの期外収縮にあたるといわれています。

    今回は、期外収縮の原因・危険性・付き合い方について解説します。

期外収縮の種類

期外収縮には、心室から起こる「心室性期外収縮」と、心房から起こる「上室性期外収縮」の2つに分かれます。
この期外収縮はほとんどの場合、心配はいりませんが、「本当に放置していいの?」と不安に思われる方も多いです。

不整脈の中でも、正常な拍動の間に時々不規則な拍動が現れる、いわゆる“脈が飛ぶ”といったものが期外収縮です。

脈を取ると、通常は「トントントントン」と一定に打つのですが、例えば「トントトントトントントントトト」というように脈のリズムが不規則になります。

主な症状

以下のものがあります。

  • 脈がドキドキする(動悸)
  • 脈が一瞬飛ぶように感じる
  • 胸が詰まるような違和感がある
  • 心臓の鼓動を強く感じる

実際、期外収縮は健康な成人の90%以上に見つかったという研究もあり、非常によくある不整脈の一種です。
ホルター心電図(24時間心電図記録)を行うと、期外収縮が全くない人はほとんどいません。
多くの人は、自分の心臓で期外収縮が起こっていることに気づかず、気づいても「一瞬だけ脈が抜ける」「胸がつかえる感じがする」という程度であることが多いです。

また、期外収縮と診断された患者さんの10年間の生存率を追跡調査した結果、正常な人と同等というデータもあります。
つまり、期外収縮自体で命に関わることはほとんどありません。症状があっても治療をしないことの方が多いです。
症状が軽く、数も少なくリスクが低い人は、経過観察のみで問題ない場合がほとんどです。

期外収縮の原因

期外収縮の原因は大きく分けて2つあります。

1)自律神経の乱れによるもの(多くは問題なし)
アルコールやコーヒーなどカフェイン飲料の摂りすぎ、睡眠不足、疲労がたまっている、精神的ストレスなどによって、自律神経のバランスが崩れると期外収縮が起こることがあります。このタイプは基本的に心配いりません。

2)心臓の病気によるもの(注意が必要)
心筋梗塞、狭心症、心筋症、心不全、弁膜症などの心臓の病気が原因で期外収縮が起こることがあります。
この場合は、原因となる病気の治療が必要です。心電図や心臓超音波(エコー)検査などで、心臓の病気があるかどうかを調べることができます。

心臓の病気がなく、期外収縮以外に異常がない場合は治療の必要はなく、普段の生活や食事の制限もありません。
心電図で稀に「2連発」「3連発」と記載されていても、心臓の病気がなければ多くは心配不要です。

治療が必要な場合

期外収縮の多くは無害ですが、次のような場合は他の心臓の病気も関連している場合があるので注意が必要です。

  • 期外収縮が1日の心拍数のうち10%以上ある場合(例:1日10万回中1万回以上が期外収縮の場合)
  • 自覚症状が強い場合

こうした場合は、心臓の機能低下を招くことがあり、治療を検討します。
治療法には以下のようなものがあります。

  • 薬物療法:脈をゆっくりさせる抗不整脈薬を処方しますが、完全に期外収縮をなくすことは難しいのが実情です。
  • カテーテルアブレーション(稀なケース):足の付け根の静脈からカテーテルを送り込み、不整脈が発生する心臓内の部位に先端を到達させます。そこで、不整脈の原因となる場所を調べ、高周波電流で焼く治療方法です。

期外収縮との付き合い方

「心配は不要」と言われても、不整脈があること自体を不安に感じる方は多いでしょう。その不安やストレスが原因で睡眠不足になったり、それによって期外収縮が増えるという悪循環も起こることがあります。まず大事なことは「気にしすぎないこと」です。

この悪循環を断ち切るには、検査を受けて「心臓に問題はない」と言われたら、その結果を信じて、必要以上に不安を抱かないようにしましょう。
楽しいことをしたり、リラックスする時間を持つことでストレスにならないようにしましょう。運動中や集中している時には自覚しにくいことが多いです。

期外収縮は、静かな時間(就寝前やリラックス時)に感じやすい傾向があります。静かにしていると普段よりも症状に敏感になります。
また、睡眠不足の翌日などに出やすいため、脈の乱れを「生活リズムのバロメーター」として捉え、自分の生活を見直すきっかけにするのも良いでしょう。

動悸や交感神経の緊張をほぐすために漢方薬を使用することもあります。期外収縮が発生している場所にもよりますが、カテーテルがうまく持っていける場所が発生源の場合には、カテーテルアブレーションの治療を行って、期外収縮の発生を減らすこともできます。

 

まとめ

期外収縮は健康な人でも起こる、ごく一般的な不整脈です。
多くは無害で、命に関わることはありません。
ただし、期外収縮の頻度が多い場合や、自覚症状がある場合は、検査を受けることが大事になります。

健康診断で「不整脈」と言われた方や脈の乱れが気になる方は、まずは一度、専門の医療機関か循環器内科へ相談してみてください。心臓の病気が原因でない場合、自覚症状があっても基本的に治療が不要なことが多いです。自覚症状が強い場合、期外収縮に気づいてしまうと不安に思われる方も少なくありません。

多くの方は、医師から「心配いりません」と聞くと安心し、不安から抜け出すことができます。まずは検査を受けて、重要な病気が隠れていないかを確認することが非常に大事です。