狭心症との違い
冠攣縮性狭心症は狭心症の一種ですが、通常でよく言う“狭心症”とは症状の出方が異なります。よく言う狭心症は、血管が動脈硬化で細くなってしまい、詰まりかけて動いた時に症状が出やすい病気です。胸が痛い、苦しくなる、息苦しくなるといった症状で訴える方が多い病気で、いわゆる労作によって症状が出る老年性狭心症、これは動脈硬化による狭心症になります。こちらについてはお薬の治療やカテーテル治療、バイパス手術といった治療が必要になることがありますが、今回、お話しするのはこれとは違うものです。
冠攣縮性狭心症の特徴
実際には血管に動脈硬化はなく、普段はきれいな血管なのですが、何かの刺激で血管が痙攣を起こしてしまいます(スパスムとも呼びます)。
特徴的なのは、夜中や明け方に起こりやすく、安静にしている時によく起こります。
症状が起こる頻度は、連日起こる人もいれば、1ヶ月に1回だったり、年に1回ぐらい、時々起こるという方が多いです。
<症状>
- 冷汗が出る
- 胸が痛くなる
ニトロ(ニトログリセリン)という血管を広げる薬を使うことによって速やかに改善することが多いです。これを放置すると不整脈が出たり、実際に心筋梗塞を起こしてしまうこともあると言われています。
ただ、実際に病院にかかると循環器内科の病院でもカテーテルまで行うことがあります。最近では、冠動脈をCTに映すことによって、血管の中に細いところがあるかどうかがわかります。ただ、通常のカテーテル検査や冠動脈CTをとった時、検査中に症状が出ることは、ほとんどないはずです。
なので、検査をした時には「血管はきれいですよ、狭心症じゃないです、異常ないですよ」と言われてしまうことが多い病気です。
診断をつけるためには、症状が出た時の「心電図の変化」が一番重要
症状があるのは、夜中や明け方が多いため、実際に病院に行って心電図をとれることは入院中以外はまずないと思います。
そのため、ホルター心電図(24時間心電図)をつけることがあります。ただ、年に数回の人が1日つける心電図をやっても出ることはほとんどありません。大事なのは問診で「冠攣縮性狭心症だろう」という予測を立てることです。
そして一番、診断がしっかりつくのは、カテーテル検査で行う攣縮の誘発試験という検査があります。これはカテーテルを行っている時に、痙攣を起こす薬をわざと血液の中に注入して反応を見ます。実際に痙攣を起こす方であれば、血管が痙攣を引き起こし、ひどい方では血管が閉塞してしまい、胸の痛みや普段の症状が出るようであれば診断がつきます。
治療方法
実際に診断がついた場合には、高血圧の治療の一種であるカルシウム拮抗薬(血管を広げる薬)を使うことで予防します。他にも、硝酸薬といって、違うタイプの血管を広げる薬も使用されることがあります。
<発症を引き起こしやすくする要素>
- 喫煙
- ストレス
- 不眠など
上記が発症の原因になると言われています。また、寒い時期にも起こりやすいと言われています。ですので、もし喫煙される方がいれば、禁煙はぜひしてほしいです。症状が頻繁に起こる方は、お薬で予防していくことが多いです。
日本人に非常に多いと言われる冠攣縮性狭心症
冠攣縮性狭心症の診断がしっかりつくケースは少ないと思います。実際に、カテーテル検査を行っている施設でも、攣縮誘発試験まで行っているところは非常に少ないです。これは薬の影響で徐脈、脈がゆっくりになったり、実際に胸痛が出たりすることもありますし、患者さんや術者への負担もあるためです。症状から大部分のことが予測できるので、臨床経過を合わせて治療されることが多いと思います。薬がなかなか効かない方もいらっしゃいますが、何種類か薬を加えることによって、コントロールできることがほとんどです。
胸が痛いけれど冠動脈CTやカテーテルを行ったけど痛みが続いている、こういった方には冠攣縮性狭心症を考える必要があると思います。もし、このような状況で悩まれている方がいれば、かかりの先生に相談してみましょう。